昭和16年7月
昭和16年7月19日小笠原南東洋上に発生した台風8号は漸次その進路を北北東に取り、22日には関東東部に上陸し、さらに北北東に進んで阿武隈山系を縦走して仙台平野を経て八戸から北海道へと去った。
阿武隈川流域には、21日夜来から23日にかけてかなりの降雨をもたらした。折りしも梅雨性の降雨によって各河川とも相当増水していたところへの台風、本川は刻々と増水し、本川筋の各観測所では既住最高水位を記録するに至った。本宮量水標では、計画高水位を突破すること37cm、郡山市下流の小和滝量水標にいたっては1.75mオーバーの大出水となった。
阿武隈川下流部、岩沼市の堤防が各所で破堤するなど、堤防決壊・破損は981ヵ所にものぼり、家屋の全半壊、道路の埋没破損なども続出。減水が極めて緩慢であったため既住の最高水位を超えること実に29時間にもおよび、増水時の激流、減水時の渦流は暴虐の限りを尽くし、50有余年来の未曾有の大洪水は、およそ1,860万円もの被害をもたらした。
出典)「阿武隈川 洪水記録写真集」、建設省福島工事事務所(現 国土交通省福島河川国道事務所)、平成12年3月、38ページ