平成11年9月
平成11年9月14日、台風16号を取り巻く暖かく湿った空気が秋雨前線を刺激し、夕方から大雨が降り始めた。その影響により阿武隈川では、9月15日未明から水位が上昇し始め、須賀川、阿久津、本宮、二本松観測所においては警戒水位を超える洪水となった。また、福島観測所では、指定水位3.00mを超えて警戒水位4.00mに迫る勢いで増水、伏黒観測所でも指定水位を超えた。このため、郡山市や梁川町などで内水による浸水被害が発生した。
□五十沢築提の効果
梁川町、阿武隈川左岸の五十沢地区は、堤防のない区間だったため、洪水時には頻繁に浸水被害が発生してきた。特に、平成10年8月末の洪水においては、浸水面積約120ha、浸水戸数約40戸にものぼった。この五十沢築堤は、全長約3kmのうち、残区間約350mを阿武隈川平成の大改修により施工、平成11年9月8日締め切りを完了した。その直後に発生した本洪水においては、この堤防により約55haの浸水を防いだと推定される。
□愛宕川地区における排水ポンプの効果(郡山市)
郡山市久保田地区の釜沼樋管に流れる愛宕川は、過去に何度も洪水による内水の浸水被害を受けてきたが、排水ポンプ場の整備、ポンプ4台の配備でその被害は大幅に軽減された。さらに、小規模内水に対処するため排水ポンプ車を事務所管内に6台配備し、内水被害の軽減に効果を発揮している。本洪水においては、救急排水ポンプ場および排水ポンプ車1台の効果により約15ha、約59戸の浸水被害を防いだと推定される。
出典)「阿武隈川 洪水記録写真集」、建設省福島工事事務所(現 国土交通省福島河川国道事務所)、平成12年3月、182ページ