阿武隈川の特徴と概要

1)流域の概要

福島県の母なる川として親しまれている阿武隈川は、幹川流路延長239kmの大河である。

その源を福島・栃木県堺の那須連峰の山々に発し、阿武隈山脈および奥羽山脈から発する大滝根川や安達太良川、松川、荒川などの支川を合わせて福島県のほぼ中央部である中通り地方の安積、信夫盆地を北上し、狭さく部を経て宮城県に入り、さらに白石川などの支川を合わせて仙台平野を東流し、岩沼市及び亘理町において太平洋へと注いでいる。

流域は福島、宮城、山形の三県にまたがり、流域面積は5,400km2にも及び、流域内人口は、福島・宮城両県を合わせて約138万人にも達している。

福島・宮城両県の社会、経済、文化の発展はこの阿武隈川に負うところがきわめて大きいが、その反面、台風や長雨による洪水などの水害も多く、阿武隈川の歴史は治水・利水の歴史でもある。

 

2)地形について

南北に走る阿武隈山脈と奥羽山脈との間を流れる阿武隈川。その流域の形状は、南北に長い羽根状をなしており、各支川が東西から櫛状に本川に合流している。

流域の西側には、那須岳、旭岳、安達太良山、東吾妻山、刈田岳などいずれも標高1,000m以上の峰々が連なり、北は名取川流域、南は利根川流域に接している。一方、阿武隈川の東側はというと、標高800m級の山が連なる阿武隈山脈で、太平洋に注ぐ中小河川と流域を異にしている。
従って東西の分水嶺から流出する諸支川は急勾配で落差が大きい。中央を北流する阿武隈川本川の縦断勾配は、白河、郡山、本宮、福島、伊具それぞれの盆地付近では緩やかで、盆地と盆地の間では山が迫って峡谷をなして急勾配となっている。

壮年期の急峻な地形を呈している奥羽山脈と、それとは対照的に老年期に入り緩慢な地形となっている阿武隈山脈、その間を流れる阿武隈川は奥羽山脈からの流出土砂のため東側阿武隈山脈に偏った流れとなっている。途中、郡山・本宮間狭さく部、本宮・福島間狭さく部および県堺付近の狭さく部を還流している。

 

3)気候について

阿武隈川流域の気候は、全般的には温暖な太平洋型気候として扱われているが、厳密には阿武隈川西部の奥羽山脈側の気候は、東部の阿武隈山脈側のそれとは違った気象特性がみられる。奥羽山脈側は、日本海型気候の影響もあって冬期間は降雪の多い豪雪地帯である。

阿武隈川が流れる中通り・平野部は、太平洋型気候との中間的気候となっており、年平均気温で見ると浜通りよりも1度前後低い。さらに冬季の月平均気温ともなると2~4度は低くなり、ほとんどの地域で氷点下にまで下がる。そして、春は季節風が強く異常乾燥となりやすく、夏は盆地特有の猛暑となり、これまでの最高気温は39.1度とかなりの蒸し暑さを記録している。秋は快晴の日が多く、もっとも過ごしやすい季節といえそうだ。

流域の年平均降水量は、西方山間部では1,800~2,000mm程度、平野部では1,100~1,400mm程度で、東北地方においては少ない方ではあるが、山岳部の蔵王および吾妻山系では2,700mmに達することもある。平成10年8月末豪雨においては、約6日間で1,200mmを超える雨も記録している。

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